社会的DNAの検出-日英村落対比研究の20年間、9つの科研費研究の成果を一書に統合

人は違う点よりも共通する・似ている点の方が多い!

日本から世界に向けての情報発信および価値の提供を含めて国際貢献をおこなう橋頭堡にすることを目的として、愛媛大学法文学部 高橋基泰教授が20年来取り組んできた日英村落史的対比研究の成果を一書にまとめて出版します。日本では旧上田藩上塩尻村を、英国ではケンブリッジ州ウィリンガム教区を中心にした日英村落の対比研究を、時系列的に長期間観察された対象をなるべく多角的に分析する、総合モノグラフ研究です。その成果として、ようやく社会的DNA とでも称すべき項目の検出を行うことができました。

■目的

本書は、愛媛大学法文学部 高橋基泰教授が20年来取り組んできた日英村落史的対比研究の成果を一書にまとめ、日本から世界に向けての情報発信および価値の提供を含めて国際貢献をおこなう橋頭堡にすることを目的としています。対比(parallel and contrast)研究では、相違点の強調をする比較ではなく、共通点・相似点を見出そうという姿勢をとります。これまで日本と英国双方の研究チームを組織し、その対話を通じて研究を進めています。本モノグラフの対象である、日本では旧上田藩上塩尻村を、英国ではケンブリッジ州ウィリンガム教区を中心に研究が進行の日英村落の対比研究という方法は、対象同士に異なる特徴を見出すことにではなく、むしろ相互の独自性を認めた上で相互の相違・共通性を発見していこうという問題意識に由来します。人は違う点よりも共通する・似ている点の方が多いからです。比較して優劣を競うものではなく、対比による認識の共有・相互理解を通して創造にむすびつけることを望んでいます。

■内容

理論を裏付ける十分な基礎は、時系列的に長期間観察された対象をなるべく多角的に分析する、本書のような総合モノグラフ研究によって提供されます。ところが、1つの総合モノグラフ研究を果たすには学説史の進展およびその要請とあいまって20年はかかります。近年はさらに長期化する傾向にさえあります。したがって、レスター学派を濫觴とするイギリスでも1950年代以降、成果物はまだ20編を超えません。そして日本では、やはり半世紀前の有賀喜左衛門の岩手県石神村、中村吉治研究グループの岩手県煙山村・長野県今井村など文字通り指折るほどです。今回の刊行物は、その後継となる長野県上塩尻村の総合研究を英国のケンブリッジ州ウィリンガム教区のそれと対比する形で著します。全力で取り組んでも時間がかかっていますが、ようやく対比研究の成果として、社会的DNA とでも称すべき項目の抽出を行うことができました。理論・モデルへの時系列的・多角的実証データの提供という点でも、学術的意義は高いと判断しています。

論文情報

■書籍情報

タイトル:村の相伝:日英対比研究編―社会的DNAの検出―
著者名:愛媛大学法文学部 教授 高橋基泰
ページ数:450頁(予定)
発売日:2021年2月28日(予定)

助成金等

  • 日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(20HP5147)
  • 愛媛大学経済学会出版助成金

図表等

  • 英国ケンブリッジ州ウィリンガム教区姓転換・個人単位

    英国ケンブリッジ州ウィリンガム教区姓転換・個人単位

    200年間、7・8世代ほどで、各家系の存続は2割だが貧困化の中でも協働が見られる

    credit : 髙橋基泰(愛媛大学)
    Usage Restriction : 使用許可を得てください

  • 旧上田藩(長野県)上塩尻村・佐藤家系図模式図

    旧上田藩(長野県)上塩尻村・佐藤家系図模式図

    家については日本の場合、養子制度が存続を英国の倍にしている

    credit : 髙橋基泰(愛媛大学)
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  • 旧上田藩(長野県)上塩尻村・伊勢暦書き込み

    旧上田藩(長野県)上塩尻村・伊勢暦書き込み

    18世紀江戸期農村でのカレンダー(伊勢暦)も、スケジュール・メモとして書き込まれた

    credit : 髙橋基泰(愛媛大学)撮影(藤本蚕業歴史館の許可を得てある)
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問い合わせ先

氏名 : 高橋 基泰
電話 : 089-927-9268
E-mail : takahashi.motoyasu.mc@ehime-u.ac.jp
所属 : 法文学部