非芳香族性または反芳香族性を示す大環状共役化合物の合成

アズレンを含む24π電子系環拡張ポルフィリンの合成

<ポイント>・アズレン2個とピロール4個で構成される新規環拡張ポルフィリンであるジアズリヘキサフィリンの合成に成功しました。
・含窒素芳香環であるピロール6個と2個の架橋炭素が環状につながっているポルフィリン類をアメチリンといい、今回、初めてピロール2個をナフタレンの構造異性体であるアズレンに置換したアメチリンを合成しました。
・X線結晶構造解析を用いて分子構造を決定し、吸光分光法、磁気円偏光二色性分光法、分子軌道計算により電子構造を明らかにし、24π電子系に基づく非芳香族性または反芳香族性を示すことを見いだしました。
<概要>愛媛大学大学院理工学研究科奥島鉄雄准教授、宇野英満教授らの研究グループは、信州大学の小林長夫特任教授と共同で、比較的安定な反芳香族分子として知られるアメチリンのうち、ピロール2個をナフタレンの構造異性体であるアズレンに置換したジアズリアメチリンの合成に成功し、その分子構造や芳香族性を明らかにしました。

ポルフィリンは4個のピロールと4個の架橋炭素が環状につながり、18π電子系に基づく芳香族性を示す安定な分子であり、クロロフィルやヘムの基本構造として知られています。ピロールや架橋原子の数を変化させることで、多様なπ電子系を構築することから、これまでにたくさんの環拡張/縮小ポルフィリン類が報告されてきました。ピロール6個と2個の架橋炭素が環状につながっている環拡張ポルフィリンの1つであるアメチリンは、反芳香族性を示すにも関わらず、比較的安定であることが知られています。
今回、1,3-ジピロリルアズレンとアルデヒドの縮合反応を鍵として、核置換アメチリンであるジアズリアメチリンの合成に初めて成功しました。これまでに報告されているジカルバアメチリンは、芳香族性を示すものと大環状共役のない非芳香族性を示すものしか、知られていませんでした。ジアズリアメチリンは24π電子系に基づく環状共役を有し、非芳香族または反芳香族性を示すことを、分光特性や分子軌道計算から明らかにすることができました。
本研究成果は、2021年12月21日にアメリカ化学会の「Organic Letters」誌電子版に掲載されました。

参考 URL1: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.1c03882

論文情報

【掲載誌】Organic Letters
【題名】Synthesis of Non- or Antiaromatic Dicarbaamethyrin: [24]Diazulihexaphyrin(0.1.0.0.1.0)
【著者】Tetsuo Okujima, Hayato Inaba, Shigeki Mori, Masayoshi Takase, Hidemitsu Uno, Yoshiaki Chino, Yusuke Okada, Nagao Kobayashi
【発行日】2021.12.21
【DOI】10.1021/acs.orglett.1c03882

図表等

  • ジアズリアメチリンの合成

    ジアズリアメチリンの合成

    credit : 奥島鉄雄(愛媛大学)
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問い合わせ先

氏名 : 奥島鉄雄・宇野英満
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E-mail : okujima.tetsuo.mu@ehime-u.ac.jp
所属 : 理工学研究科