化学物質のモニタリング情報を一元管理して見える化
ChemTHEATREで環境情報の二次利用を促進する
化学物質の環境モニタリングデータを一元的に集約し、有効に活用するためのプラットフォーム「ChemTHEATRE(ケムシアター)」を開発・公開しました。あらゆる化学物質のモニタリング情報を収録・閲覧できるデータベースを核として、収録情報を可視化および解析するツールを実装したウェブ上のプラットフォームの創出を目指しています。
既存の化学物質の環境中濃度に関する情報の多くは、学術論文あるいは公的機関の報告書として電子化されてはいますが、そのほとんどがPDFファイルやエクセルファイルとして保存されており、モデリングやリスク解析を行う上で決して使いやすい形式とはいえません。気候変動研究に比べて地球規模の化学汚染の予測が大きく遅れているのは、予測モデルの入力データや検証材料になり得るモニタリングデータが整備されていないことが一因だと考えられます。多額の研究費を投じて得られた貴重な研究成果が十二分に活用されていないのは大きな損失です。これらの貴重な情報を将来にわたって有効活用するためには、汎用性の高いデータベースの構築が必須であると考え、2016年からChemTHEATREのプロジェクトを開始しました。これまでに、1300種類を超える化学物質のモニタリング情報を収録し、公開しています(2020年10月現在)。
ChemTHEATREにデータを集積することで、化学物質のトレーサビリティが確保され、環境中での挙動・運命予測の実施が容易になります。また、化学物質排出量や有害性情報等に関する外部のデータベースとの連携により迅速かつ多様な解析が可能となり、生態系やヒト健康へのリスク・安全性に関して透明性の高い情報提供が可能となります。このようなChemTHEATREに関する活動は、2020年6月18日の朝日新聞科学欄でも紹介されました。
昨今では、学術情報のオープン化が推進されており、科学論文の公開にあたって実験データをリポジトリに登録し開示することを求められることもあります。ChemTHEATREはそのリポジトリとしての役割を果たすべく、2020年8月にFAIRsharingに登録しました。集積された情報と、それらを可視化する高度な技術との連携によりモニタリング研究の社会への還元、環境教育への活用など、オープンサイエンスの推進に貢献します。
ChemTHEATREは愛媛大学、国立環境研究所、鹿児島大学、兵庫県立大学、新潟大学に所属する研究者らによって生み出されました。今後益々、モニタリングデータの二次利用促進に貢献したいと考えています。
参考URL
助成金等
- 日本化学工業協会 Long-Range Research Initiative (LRI)
- (独)環境再生保全機構 環境研究総合推進費(JPMEERF18S20304)
- (独)環境再生保全機構 環境研究総合推進費(JPMEERF18S20304)
図表等
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ChemTHEATRE運用の概要と意義
公開されたモニタリングデータを分析法や試料のメタデータとともに整理し,リスク評価等への活用に貢献しています。外部のデータベースともリンクさせており,必要な情報が取得しやすいように設計しています。また,様々なデータベースと連携して「繋いで使う」を実現させるために,FAIRsharingやNBDCにも登録しています。
credit : ChemTHEATRE
Usage Restriction : Creative Commons Attribution License (CC BY 4.0) -
ChemTHEATREの活用事例
ワンストップで複数のソースからのモニタリング情報が入手可能で,検索結果をエクスポートしてここに示すような事例などに活用できます。
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ChemTHEATREの目指すところ
ChemTHEATREでは3つの目標を達成するために,様々なことに取り組んでいます。
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問い合わせ先
氏名 : 仲山 慶
電話 : 089-927-8132
E-mail : kei_n@ehime-u.ac.jp
所属 : 沿岸環境科学研究センター