近赤外光を吸収する大環状芳香族の合成
9個のピロールで構成される拡張ポルフィリノイドの選択的合成
・近赤外光を吸収する新たな大環状芳香族化合物の合成に成功しました。
・含窒素複素環であるピロールが環状につながって全体として芳香族性を示す分子のうち、これまでに知られていた6~8および10個のものに加えて、9個のピロールで構成される分子を初めて選択的に合成しました。
・X線結晶構造解析を用いて分子構造を、紫外可視近赤外分光法、磁気円偏光二色性分光法、分子軌道計算により電子構造を明らかにしました。
愛媛大学大学院理工学研究科奥島鉄雄准教授、宇野英満教授らの研究グループは、信州大学の小林長夫特任教授と共同で、ピロール-ピロール直接結合のみで構成された環拡張ポルフィリンであるシクロ[9]ピロールの選択的合成に成功し、その分子構造、光学特性、および電子構造を明らかにしました。
クロロフィルやヘムの基本構造として知られているポルフィリン類は、適切な共役拡張や官能基化により、吸収波長や物性を制御することができるので、近赤外吸収色素としての研究もさかんに行われています。ピロール–ピロール直接結合のみで構成された環拡張ポルフィリンであるシクロ[n]ピロール(n:ピロールの数)は、n=8のシクロ[8]ピロールがよく知られており、2002年に初めて合成例が報告されました。周辺部にアルキル基が結合したシクロ[8]ピロールは、ピロール二量体である2,2’-ビピロールから合成され、1,100 nm付近に強いL帯という吸収を示すことが知られています。
今回、ピロール三量体である2,2’:5’2”-ターピロールの酸化的カップリング反応により、奇数個のピロールで構成されるシクロ[9]ピロールを選択的に合成することに初めて成功しました。この分子は34π芳香族性を示し、X線結晶構造解析によりC2対称の分子構造をしていることを明らかにしました。このシクロ[9]ピロールの吸収スペクトルでは、1740nm付近の近赤外光を強く吸収することが分かりました。
本研究成果は、2021年4月15日にアメリカ化学会の「Organic Letters」誌電子版に掲載されました。
参考 URL1: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.1c00899
論文情報
【掲載誌】 Organic Letters
【題名】Cyclo[9]pyrrole: Selective Synthesis of [34]Nonaphyrin(0.0.0.0.0.0.0.0.0)(シクロ[9]ピロール:[34]ノナフィリン(0.0.0.0.0.0.0.0.0)の選択的合成)
【著者】Hiroki Matsumoto, Tetsuo Okujima, Shigeki Mori, Ana C. C. Bacilla, Masayoshi Takase, Hidemitsu Uno, Nagao Kobayshi
【DOI】10.1021/acs.orglett.1c00899
図表等
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酸化的カップリングによるシクロ[9]ピロールの選択的合成
credit : 奥島鉄雄(愛媛大学)
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問い合わせ先
氏名 : 奥島鉄雄・宇野英満
電話 : 089-927-9615
E-mail : okujima.tetsuo.mu@ehime-u.ac.jp
所属 : 理工学研究科