政策の意図せざる効果

航空政策から問い直す政策分析・評価

【研究成果のポイント】
・本書は、航空政策がもたらす「意図せざる効果」を実証的に検証しています。
・発着枠制度、環境関連の政策、ターマック遅延規則などを取り上げ、制度設計と航空会社の戦略的行動との関係を明らかにしています。
・政策の意図した効果だけでなく副作用にも目を向け、より良い政策形成につなげる学術研究の「問題提起機能」を提示しています。

【研究成果の概要】
本書は、航空政策がもたらす意図せざる効果を実証的に検証しています。空港発着枠制度、燃料使用や排出量に影響を及ぼす政策手段、ターマック遅延規則を取り上げ、それらが競争、運賃、燃料消費、欠航に与える影響を分析しています。また、政策効果を推定する手法の限界についても検討しています。本書は、政策やその評価手法から生じる見過ごされがちな問題や意図せざる結果を発見・言語化するという、学術研究の「問題提起機能」の重要性を論じています。

本書は、航空政策を主な題材として、公共政策がもたらす意図せざる結果を実証的に検証した研究書です。序章と終章を除く各章は、国際的な査読付き学術誌に掲載された著者の研究成果を基に構成されています。本書は、学問的な厳密さと、政策が現実の社会でどのように機能するのかについての実践的な理解を両立させることを目指しています。

具体的には、米国と英国における空港発着枠取引を分析し、市場メカニズムが必ずしも競争を促進するとは限らないことを明らかにしています。航空会社による発着枠制度の戦略的な利用は、むしろ競争を回避する余地を生み、空港処理能力を実質的に制約し、運賃を上昇させる可能性があります。また、航空機燃料税や空港地上走行の計測管理など、燃料使用や排出量に影響を及ぼす政策手段についても評価しています。これらの施策は燃料消費やCO2排出を削減し得る一方、その効果は長期的には持続しない可能性があることを示しています。

さらに、本書は米国のターマック遅延規則を分析し、重要な政策上のトレードオフを浮き彫りにしています。同規則は、乗客を機内に乗せたまま航空機が地上で長時間待機する事態を減少させる一方で、欠航を増加させる可能性があります。加えて、政策効果の推定に用いられるマッチング手法や重み付け手法についても検討しています。シミュレーションの結果、一定の条件下では、これらの手法が推定バイアスを減少させるどころか、かえって増大させる可能性があることを示しています。

本書の中心的なメッセージは、政策分析・評価において、意図した効果だけでなく、見過ごされがちな副作用や意図せざる結果も考慮すべきであるという点にあります。著者は、学術研究には政策効果を推定する役割に加えて、「問題提起機能」があると論じています。これは、十分な注意を払われてこなかった問題を発見し、それを明確に説明したうえで、より幅広い社会的・政策的議論へとつなげることを意味します。

本書で提示される分析枠組みは、航空政策にとどまらず、幅広い政策分野に応用することができます。本書は、制度設計と企業の戦略的行動がどのように相互作用するのか、また、分析手法の選択が研究結果にどのような影響を及ぼすのかを検討しています。その主な目的は、副作用を含む政策の帰結をより包括的に理解し、より良い政策形成の方法を探ることにあります。本書で使用したデータとStataコードは、サポートサイトで公開しています。

本書は、2026年度日本公共政策学会賞(著作賞)を受賞しました。

参考 URL1: https://doi.org/10.1007/978-981-96-7303-2

論文情報

タイトル:Aviation Policies: Studies of Unintended Effects and Consequences
著者:Fukui, H. (2025)
出版社:Springer
DOI:10.1007/978-981-96-7303-2
本文xii + 516頁、図版176点(カラー1点)
サポートサイト:https://sites.google.com/view/aviation-policies/

助成金等

  • JSPS科研費 24K04719, 21KK0028

図表等

  • 図1

    図1

    著書表紙

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問い合わせ先

氏名 : 福井 秀樹
電話 : 089-927-8208
E-mail : fukui.hideki.hz@ehime-u.ac.jp
所属 : 愛媛大学法文学部・教授