地球・火星マントル深部の主要鉱物Majorite(メージャライト)に含まれる三価鉄量を高圧実験で解明

初期地球・火星のマントル酸化状態を理解するための新たな制約

地球や火星深部で主要鉱物となるMajorite(メージャライト)中の鉄の価数状態を高圧実験とX線吸収端近傍構造分析により決定した。その結果、Majoriteが多量のFe3+を含むことを明らかにし、岩石惑星形成後のマントルの酸化状態や表層における酸化的マグマ形成に重要な役割を果たした可能性を示した。

地球や火星などの岩石惑星では、マントルの酸化状態がマントル物質の融解温度(マグマの形成)や火山ガスの組成、さらには表層環境の進化に大きな影響を与えると考えられています。特に、惑星形成初期に広く存在したと考えられる「マグマオーシャン」が冷え固まる過程では、鉄がどのような酸化状態で鉱物に取り込まれるかが、その後のマントル進化を左右する重要な要素となります。鉄は主にFe2+(二価鉄)またはFe3+(三価鉄)として存在しますが、高圧条件下で形成される鉱物中のFe3+量を正確に測定することは容易ではありません。Majorite(メージャライト)は、地球では深さ約500〜600 km、火星ではマントル底部に相当するような高温高圧条件で安定な主要鉱物です。そのため、Majoriteがどの程度Fe3+を含むかを明らかにすることは、惑星内部の酸化状態を議論するうえで重要な課題となっています。

研究グループは、愛媛大学先端研究院地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)のマルチアンビル高圧発生装置を用い、18万気圧・2150〜2200 ℃の高温高圧条件下で、マグマと共存するMajoriteの合成に成功しました。さらに、大型放射光施設SPring-8において、元素の価数を推定できるX線吸収端近傍構造(XANES)分析を行い、合成したMajorite中のFe3+量を決定しました。その結果、マグマオーシャンから形成されるMajoriteは、地球下部マントルで最も豊富な鉱物とされるBridgmanite(ブリッジマナイト)に次いで、多くのFe3+を含むことが明らかになりました。さらに、Fe3+に富むMajoriteを含むマントル物質が上昇し、浅部で別の鉱物へ相転移または分解する際には、鉱物中に取り込みきれないFe3+がHematite(ヘマタイト)などの鉱物として放出される可能性があります。この過程は、酸化的なマグマの形成に寄与した可能性があり、地球や火星におけるマントル酸化状態の進化を理解するうえで重要な知見となります。

本研究成果は、地球や火星内部の酸化状態に新たな制約を与えるとともに、初期惑星における酸化的マグマ形成過程の理解にも貢献すると期待されます。

参考 URL1: https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2025JB033231

論文情報

タイトル:Ferric iron content of majorite coexisting with reducing melt at 18 GPa: Implications for the mantle oxygen fugacity of Mars and Earth.
著者:Kuwahara, H., & Nakada, R. (2026).
掲載誌:Journal of Geophysical Research: Solid Earth
DOI:https://doi.org/10.1029/2025JB033231

助成金等

  • 日本学術振興会 科研費基盤研究(B) (24K00737)
  • 日本学術振興会 科研費挑戦的研究(萌芽) (25K22048)

図表等

  • マグマから晶出するFe<sup>3+</sup>に富むMajoriteのイメージ

    マグマから晶出するFe3+に富むMajoriteのイメージ

    credit : 桑原 秀治(愛媛大学)
    Usage Restriction : 使用許可を得てください

問い合わせ先

氏名 : 桑原 秀治
電話 : 089-927-8153
E-mail : kuwahara.hideharu.vd@ehime-u.ac.jp
所属 : 愛媛大学先端研究院地球深部ダイナミクス研究センター・特任講師