人為的影響下にある東アジアのサンゴ礁の現状等に関する専門書の国際出版

最新の研究成果等に基づき、東アジアのサンゴ礁生態系の現状をレビュー

 

サンゴ礁生態系は地球上で最も生物多様性と生産性が高い生態系の一つです。全世界で5億人がサンゴ礁生態系から、食料、観光、家屋の材料、防波堤の役割等の恩恵を受けているとの報告もありますが、近年、気候変動や各種の人為的影響により、サンゴ礁生態系は急速にその規模等が減少しています。特に、東アジアは世界的も最も経済が発展した地域に位置しており、様々な人為的影響が顕在化していると推定されています。一方、韓国の済州島や九州・四国南岸域等の高緯度域では、気候変動による海水温上昇に伴い、サンゴ礁生態系が広がってきています。
本年6月に、大学院農学研究科竹内一郎教授(農学研究科附属環境先端技術センター・センター長)と琉球大学熱帯圏生物圏研究センター山城秀之名誉教授が編集を行った”Coral Reefs of Eastern Asia under Anthropogenic Impacts”が、”Coral Reefs of the World”から刊行されました。”Coral Reefs of the World”は、Springer社が発刊する専門書のシリーズの一つであり、最新の研究成果等に基づき、第一線の研究者等が世界のサンゴ礁の現状を解説する総説等から構成されています。2009年にオーストラリア・グレードバリアリーフのサンゴ礁に関する第1巻が刊行されて以来これまでに17巻が刊行されており、近い将来、18、19巻の発刊も予定されています。本書は、そのうちの17巻になります。
本書は、人為的影響下にある東アジアのサンゴ礁の現状等に関する最新の研究をまとめており、10章で構成されています。愛媛大学、琉球大学、Academia Sinica、産業技術総合研究所等の一線の研究者が著者として参加しています。そのうちの5章の総説等を竹内教授等の大学院農学研究科の教員が執筆しています。また、10章では、東シナ海沿岸域のサンゴ礁生態系保全に関する新たな視点(Perspective)も提案しています。よって、現在、緊急の課題になっている気候変動下におけるサンゴ礁生態系保全へ大きく貢献することが期待されます。
なお、竹内教授は浅海域生態系における人工化学物質の分布特性や挙動等に関する研究を行っていましたが、2010年代中頃より、主に、サンゴ礁生態系保全に関する研究を行っています。竹内教授の研究グループが最初の造礁性サンゴの論文を発表したのは2017年ですが、本書の他に、その後の6年で計16編の原著論文をMarine Pollution Bulletin、Science of Total Environment等の学術誌に発表しています。

<目次>
Chapter 1 
Introduction: The Relevance of Anthropogenic Factors toCoral Reef Conservation in the Coastal Areas of the East China Sea.
Ichiro Takeuchi

Chapter 2
Transitional Coral Ecosystem of Taiwan in the Era of Changing Climate. Chao-Yang Kuo, Shashank Keshavmurthy, Ya-Yi Huang, Ming-Jay Ho, Hernyi Justin Hsieh, An-Tzi Hsiao, Wei-Cheng Lo, Yi-Chia Hsin & Chaolun Allen Chen

Chapter 3
Dynamics of Coral Reef Communities in the Sekisei Lagoon, Japan, Following the Severe Mass Bleaching Event of 2016.
Mariyam Shidha Afzal, Kana Ikeda, Mitsuhiro Ueno & Takashi Nakamura

Chapter 4 
Succession and Emergence of Corals in High-Latitude (Temperate) Areas of Eastern Asia into the Future.
Shashank Keshavmurthy, Takuma Mezaki, James Davis Reimer, Kwang-Sik Choi & Chaolun Allen Chen

Chapter 5 
Succession and Spread of Coral Diseases and Coral-Killing Sponges with Special Reference to Microbes in Southeast Asia and Adjacent Waters.
Hideyuki Yamashiro, Naohisa Wada & Sen-Lin Tang

Chapter 6 
Succession of Ocean Acidification and its Effects on Reef-Building Corals.
Atsushi Suzuki, Akira Iguchi, Kazuhiko Sakai, Masahiro Hayashi & Yukihiro Nojiri

Chapter 7
Anthropogenic Stresses in Coral Reefs and Adjacent Ecosystems of the East China Sea.
Ichiro Takeuchi

Chapter 8
Development of a Compact Experimental System for Ecotoxicological Experiments on Acropora spp.
Ichiro Takeuchi & Kotaro Takayama

Chapter 9 
Effects of Anthropogenic Chemicals on Hermatypic Corals with Special Reference to Gene Expression.
Hiroshi Ishibashi & Ichiro Takeuchi

Chapter10 
Perspective for the Conservation of Coral Reefs in the East China Sea.
Ichiro Takeuchi

参考 URL1: https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-031-27560-9

論文情報

■出版物詳細

タイトル:Coral Reefs of the World. Vol. 17. Coral Reefs of Eastern Asia under Anthropogenic Impacts.
編集:竹内一郎・山城秀之
ページ数:i-vii + 1-180
発売日:2023年6月25日

図表等

  • Coral Reefs of the World. Vol. 17. Coral Reefs of Eastern Asia under Anthropogenic Impacts.

    Coral Reefs of the World. Vol. 17. Coral Reefs of Eastern Asia under Anthropogenic Impacts.

    credit : Springer
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問い合わせ先

氏名 : 竹内 一郎
電話 : 089-946-9899
E-mail : takeuchi@agr.ehime-u.ac.jp
所属 : 大学院農学研究科