段階的分子内反応によるmeso,β-縮環型フェナントロポルフィリンの合成

【研究のポイント】
●熱変換型前駆体法により、ベンゾ部分にアリール基を有するベンゾポルフィリンを合成した。
●アリールベンゾポルフィリンのアリール基とmeso位での分子内Scholl反応により、meso,β-縮環型フェナントロポルフィリンを合成した。

【研究の概要】
愛媛大学大学院理工学研究科の奥島鉄雄准教授らの研究グループは、信州大学の小林長夫特任教授と共同で、段階的前駆体法により特異な縮環様式をもつフェナントロポルフィリンの合成に成功した。橋頭位にアリール基を有するビシクロ[2.2.2]オクタジエン縮環ポルフィリンの逆Diels-Alder反応によりγ-アリールテトラベンゾポルフィリン(γ-アリールTBP)を合成した。γ-アリールTBPの分子内Scholl反応により、meso,β-縮環型テトラフェナントロポルフィリンを合成することに成功した。

ポルフィリンは4個のピロールと4個の架橋炭素が環状につながり、18π電子系に基づく芳香族性を示す安定な分子であり、クロロフィルやヘムの基本構造として知られています。ポルフィリンの周辺部に芳香環を縮環させるπ拡張法は、芳香族性や、電子構造、分光特性などを制御する効果的な方法として知られている。β,β-縮環型ピロールを用いたπ拡張ポルフィリンは非常に多くの合成例が知られているが、meso,β-縮環型ポルフィリンの合成には汎用的な合成法は少ない。
ピロールのβ位に縮環したビシクロ[2.2.2]オクタジエンの橋頭位にアリール基を導入し、立体障害を利用した選択的ポルフィリン形成反応とそれに続く熱変換によりC4h対称のγ-アリールテトラベンゾポルフィリン(γ-アリールTBP)を合成した。γ-アリールTBPの酸化的分子内環化反応により、新しい縮環様式のフェナントロポルフィリンの合成に成功した。
X線結晶構造解析により分子構造を明らかにし、吸光分光法、磁気円偏光二色性分光法、分子軌道計算により電子構造を明らかにした。
本研究成果は、2023年4月25日にアメリカ化学会の「Organic Letters」誌電子版に掲載された。

参考 URL1: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.3c00876

論文情報

タイトル:Synthesis of Peripherally Annulated Phenanthroporphyrins
著者:Muramatsu, Kota; Okujima, Tetsuo*; Mori, Shigeki; Kikuchi, Shion; Ando, Shimpei; Okada, Yusuke; Takase, Masayoshi; Uno, Hidemitsu; Kobayashi, Nagao*
ジャーナル:Organic Letters
発行日:2023.4.25
DOI:10.1021/acs.orglett.3c00876

助成金等

  • JSPS科研費 22K05082

図表等

  • 縮環型フェナントロポルフィリンの新たな段階的合成

    縮環型フェナントロポルフィリンの新たな段階的合成

    credit : 奥島 鉄雄
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問い合わせ先

氏名 : 奥島 鉄雄
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E-mail : okujima.tetsuo.mu@ehime-u.ac.jp
所属 : 愛媛大学大学院理工学研究科・准教授