ポスト成長社会のための持続可能な食農システム

「成長」優先から脱した、持続可能な食農システム構築への新たな提言

世界のフードシステムは「成長」に固執するあまり、今や虚飾にまみれたものになっています。人間や動物を搾取し、生態系をむしばみ、化石燃料に依存し、食料から食卓まで、少数の多国籍企業によって支配されているこのシステムは、社会的、生態的、経済的に驚くべき犠牲を払い、「不適切な食品」を大量に生産しているのが実情です。食料危機が再び目前に迫っている今、現在の成長主導型のフードシステムを微調整して維持しようとする戦略は、甚だ疑問であると言わざるを得ません。

今回「Nature Sustainability」誌に掲載された新しい視点の論文は、アグロエコロジー・地理学・持続可能性科学・農村社会学・人類学・エコロジー経済学を専門とする32人のフードシステムの研究者チームが、分野横断的に新たな青写真、すなわち持続可能なポスト成長期のフードシステムを提示するものです。

世界のフードシステムは「成長」に固執するあまり、今や虚飾にまみれたものになっています。人間や動物を搾取し、生態系をむしばみ、化石燃料に依存し、食料から食卓まで、少数の多国籍企業によって支配されているこのシステムは、社会的、生態的、経済的に驚くべき犠牲を払い、「不適切な食品」を大量に生産しているのが実情です。食料危機が再び目前に迫っている今、現在の成長主導型のフードシステムを微調整して維持しようとする戦略は、甚だ疑問であると言わざるを得ません。

今回「Nature Sustainability」誌に掲載された新しい視点の論文は、アグロエコロジー・地理学・持続可能性科学・農村社会学・人類学・エコロジー経済学を専門とする32人のフードシステムの研究者チームが、分野横断的に新たな青写真、すなわち持続可能なポスト成長期のフードシステムを提示するものです。

論文「『ポスト成長社会』のための持続可能な食農システム(Sustainable Agrifood Systems for a Post-Growth World)」は、成長の論理によらず、充足性、再生、分配、コモンズ(共有)、そしてケアの原則に基づくフードシステムについて解説しています。この論文では、高所得国家・低所得国家双方において、小規模農家、食品協同組合(生協)、家庭菜園を作る人、オルタナティブな小売業者や他の取り組みなどが、フードシステムを奪還するための、膨大で多様な事例をレビューしています。すなわちこれは、課題設定型の論文として、ポスト成長期のあるべきフードシステムのモデルを提供するものであり、経済成長を際限なく追いつづけるのではなく、適切なフードシステムこそが、健全な地域社会、エコロジー、経済の基盤になり得ることを議論しています。

著者らは、広く世界の政策立案者・研究者・地域団体に対し、現在の「成長パラダイム」を超える新たな解決策を進めるために、従来のアプローチを再考するよう呼びかけています。

参考 URL1: https://www.nature.com/articles/s41893-022-00933-5

論文情報

McGreevy, S.R., Rupprecht, C.D.D., Niles, D., Wiek, A., Carolan, M., Kallis, G., Kantamaturapoj, K., Mangnus, A., Jehlička, P., Taherzadeh, O., Sahakian, M., Chabay, I., Colby, A., Vivero-Pol, J.-L., Chaudhuri, R., Spiegelberg, M., Kobayashi, M., Balázs, B., Tsuchiya, K., Nicholls, C., Tanaka, K., Vervoort, J., Akitsu, M., Mallee, H., Ota, K., Shinkai, R., Khadse, A., Tamura, N., Abe, K., Altieri, M., Sato, Y.-I., Tachikawa, M., 2022. Sustainable agrifood systems for a post-growth world. Nature Sustainability, 1–7. https://doi.org/10.1038/s41893-022-00933-5 (2022年8月4日)

助成金等

  • FEAST Project (Lifeworlds of Sustainable Food Production and Consumption: Agrifood Systems in Transition) (no. 14200116) Research Institute for Humanity and Nature (RIHN)
  • Japan Society for the Promotion of Science(JSPS) KAKENHI Grant Numbers 19K15931 and 20K15552
  • Social Sciences and Humanities Research Council of Canada (TRANSFORM, grant no. 50658-10029)
  • María de Maeztu Unit of Excellence (no. CEX2019-000940-M) grant from the Spanish Ministry of Science and Innovation
  • Czech Academy of Sciences Lumina quaeruntur award (no. LQ300282103)
  • European Union’s Horizon 2020 research and innovation programme grant agreement no. 870759
  • Dutch Research Council (NWO) Vidi project ANTICIPLAY (project no. VI. Vidi.195.007)

図表等

  • 成長期とポスト成長期における食農システムと物質と生物の関係

    成長期とポスト成長期における食農システムと物質と生物の関係

    食農システムは生産、流通、貿易、消費、管理、政策など極めて多岐の分野に渡り、生態 系や生命、物質循環などに深く関わっています。そのため食農を通じた物質と生物との関わ りを、たえず変化しながら機能している生命体の代謝の仕組みになぞらえてメタボリズム(物 質代謝)と呼び、研究チームは、新しい食農システムの構築に当たって、成長期とポスト成長 期のメタボリズムの違いを 5 つ(経済、社会・生態、配分効率、所有制度、関係性)のカテゴリ ーに分けて整理し、解説しました。

    credit : ルプレヒト クリストフ(愛媛大学)(アイコンはhttps://foodicons.org (Creative Commons 4.0 BY)より)
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問い合わせ先

氏名 : ルプレヒト クリストフ
電話 : 089-927-9092
E-mail : rupprecht.christoph.bq@ehime-u.ac.jp
所属 : 社会共創学部環境デザイン学科