B型肝炎に対する免疫治療

B型肝炎における免疫応答と革新的な治療法の開発

【研究のポイント】
・現行の抗HBV薬の限界を解説
・HBVの持続感染、肝細胞傷害の機序について免疫学的に解説
・HBV感染に対する免疫治療の可能性と現状を解説

【概要】
B型肝炎ウイルス(HBV)はそれ自身に細胞傷害性はなく、HBVに対する免疫応答が肝細胞障害を引き起こし、種々の肝疾患を引き起こす。そのため、HBVの複製を抑制する現行の抗HBV薬では十分な治療効果が得られない。本総説では、今までB型肝炎治療に用いられてきた抗HBVの限界と免疫治療の有用性を、エビデンスに基づき科学的、合理的に解説した。

B型肝炎ウイルス(HBV)は慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がんを引き起こすウイルスで、全世界で約3億人が持続感染する世界的に重大な感染症である。2019年の報告では全世界で約880万人がHBVが原因で死亡しており、この中にはガイドラインに基づき抗HBV治療薬で適切に治療されている患者も含まれている。現在、2種類の抗HBV薬が承認され、臨床で使用されているが、生涯の服用、費用、副作用、低い治療効果などの問題点が多くある。HBV感染の病態はHBVに対する免疫応答の不均衡であり、HBVに対する免疫応答を調整できれば、HBVの排除が期待できる。本総説では、HBV感染症におけるウイルスをターゲットとする抗ウイルス薬の限界を解説する。一方で、過去の免疫学的研究結果のエビデンスを基にHBV持続感染と肝障害の機序について明確にする。さらに、現在開発中のB型肝炎に対する様々な種類の免疫治療について解説する。

論文情報

Immune therapies against chronic hepatitis B. Sheikh Mohammad Fazle Akbar, Osamu Yoshida, Yoichi Hiasa, J Gastroenterol. 2022, 57, 517-528Jun 16. doi: 10.1007/s00535-022-01890-8, 2022 (June 16).

図表等

  • Immune Therapies Against Chronic Hepatitis B

    Immune Therapies Against Chronic Hepatitis B

    B型肝炎では過去40年間に2種類の免疫治療が行われてきた。しかし、それはHBV非特異的な免疫の賦活であり、HBV特異的な免疫誘導こそが効果的な治療法となり得る。

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問い合わせ先

氏名 : シェイク モナメド ファズレ アクバル
電話 : 089-960-5308
E-mail : E-mail: sheikhmohammadfazle@gmail.com; akbar.sheikh_mohammad_fazle.hh@ehime-u.ac.jp
所属 : 愛媛大学大学院医学系研究科