eラーニングで高校生の情報力が大学生レベルにまで向上
高大接続で取り組む新たな情報教育
<ポイント>愛媛大学と愛媛大学附属高等学校による共同研究チームが開発したeラーニングを活用した大学生レベルの情報教育プログラムを、高校生に実施したところ、高校生の情報力が大学2年次生レベル相当以上にまで向上しました。
<概要>愛媛大学・愛媛大学附属高等学校の共同研究チームが開発した「eラーニングを活用した早期・情報教育プログラム」を、愛媛大学附属高等学校をモデル校として、高校1年生が受講する教科「情報」に導入したところ、1年間の取組で、高校1年生の平均的な情報力が大学生2年次平均レベル相当以上にまで向上したことが確認されました。高校入学時の情報力に関係なくすべての成績群で情報力の向上がみられること、意識面においても本プログラムの有効性を実感していることなど、教育的効果の高い教育プログラムであることが確認されました。
【背景】
愛媛大学では、2014年度に、文部科学省・大学教育再生加速プログラム「大学教育の到達点の高度化~早期の“動機付け”から“深い学び”へ」(テーマⅢ:高大接続)に採択され、愛媛大学附属高等学校と共同チームを編成し、高校生に大学生レベルの教育を施すことができる早期・教育プログラムの開発・実践をおこなってきました。その一つに、2017年度より、愛媛大学附属高校をモデル校として導入した「eラーニングを活用した早期・情報教育プログラム」があります。
【eラーニングを活用した早期・情報教育プログラムの取組】
大学初年次生向けに開発されたeラーニング教材を、高校生の実態にあわせて一部修正するとともに、高校生でも無理なく取り組めるよう、実施時期・方法を工夫した早期・情報教育プログラムを開発しました。このプログラムを、愛媛大学附属高等学校1年生が受講する教科「情報」に導入し、1年間取り組みました。その取組成果について分析したところ、高校1年生の平均的な情報力が大学生2年次平均(全国の国立・私立の大学。文系・理系を含む約2,100人のデータ)レベル相当以上にまで向上したことが確認されました。高校入学時点の情報力を基準に、上位群・中位群・下位郡群の3群にわけて成績群別に詳しく分析したところ、すべての成績群において情報力の向上が確認されました。とくに情報力の向上が顕著であったのが中位群・下位群で、下位群においては、大学2年次生平均レベル近くまで情報力が向上しました。さらに、受講した高校生が本プログラムの有効性を実感していることなど、意識面においても教育的効果の高い教育プログラムであることが確認されました。大学初年次生を対象として開発されたe ラーニング教材であっても、高校生の実態をふまえたプログラムとして適切に運用することで、大学生だけでなく高校生においても有効に活用できるということを示唆されました。
【今後の展望】
教科「情報」は、2025 年度以降、大学入試共通テストに追加されることになりますが、高校の教科「情報」担当教員の養成が十分におこなわれていないことが大きな問題となっています。そのような状況下で、eラーニングを活用することで高い教育効果が得られる本プログラムが、今後の情報教育に貢献することが期待されています。
本研究は、日本リメディアル教育学会第3回論文賞を受賞しました。
論文情報
高校生が取り組むeラーニングを活用した早期・情報教育プログラムの試み,秋山英治・仲道雅輝・都築和宏・光宗宏司・三好徹明,リメディアル教育研究,14巻,2020年7月1日,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jade/14/0/14_2019.05.21.01/_article/-char/ja/
助成金等
- 平成24年度大学間連携共同教育推進事業「学士力養成のための共通基盤システムを活用した主体的学びの促進」(代表校:千歳科学技術大学)
図表等
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高校生の情報力と大学生の情報力の比較
1年間の取組で、高校生の平均的な情報力(高校到達度)が、全体・分野別(情報活用の実践力・情報の科学的な理解・情報社会に参画する態度)ともに、大学2年次生(大学到達度)相当以上にまで向上しています。
credit : 秋山英治・仲道雅輝・都築和宏・光宗宏司・三好徹明
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設問別正答率
大学2年次生(大学到達度)の正答率より高校生(高校到達度)の正答率が高い設問は、40問中25問(62.5%)。
credit : 秋山英治・仲道雅輝・都築和宏・光宗宏司・三好徹明
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問い合わせ先
氏名 : 秋山 英治
電話 : 089-927-9320
E-mail : akiyama.eiji.mk@ehime-u.ac.jp
所属 : 法文学部