ペットフードのPFAS汚染の実態とペットへの曝露

市販ペットフードの汚染実態と、犬猫の血清にみえる食餌由来曝露の可能性

【研究成果のポイント】
・日本で市販されている犬用・猫用ペットフード100製品を分析し、多くの製品からPFAS(有機フッ素化合物)を検出しました。
・魚由来原料を含む製品では、PFOSやPFUnDA、PFTrDAなど、海洋食物網で蓄積しやすい長鎖PFASが高い傾向を示しました。
・続報として、犬23頭・猫30頭の血清を分析し、愛媛コホートでは同じ個体に実際に給与されていた乾燥ペットフードと血清をペアで解析しました。
・猫では長鎖PFCAが高く、PFOS、PFUnDA、PFTrDA、総PFASについてフード中濃度と血清中濃度の関連が犬より明瞭でした。
・伴侶動物はヒトと生活環境を共有するため、家庭内の化学物質曝露を考えるOne Healthの視点からも重要な研究成果です。

【研究成果の概要】
本研究では、市販ペットフードが犬や猫のPFAS曝露源となり得るかを明らかにするため、国内で流通する犬用・猫用ペットフード100製品を対象に34種類のPFASを分析しました。その結果、多くの製品からPFASが検出され、特に魚由来原料を含むフードでPFOS、PFUnDA、PFTrDAなどの長鎖PFASが高い傾向を示しました。さらに続報研究では、実際にそのフードを食べていた犬・猫の血清PFASを解析し、愛媛コホートでは同じ個体の血清とペットフードをペアで比較しました。その結果、猫では長鎖PFCAの血清濃度が犬より高く、PFOS、PFUnDA、PFTrDA、総PFASでペットフード中濃度との強い関連が認められました。これらの成果は、ペットフードが伴侶動物、特に猫の長鎖PFCA曝露に寄与する可能性を示すとともに、犬や猫がヒトと生活環境を共有するOne Health sentinelとして、家庭内の化学物質曝露を理解する上で重要な手がかりとなることを示しています。

【研究の概要】
愛媛大学先端研究院沿岸環境科学研究センター(CMES)の研究グループは、家庭で飼育される犬・猫のPFAS(有機フッ素化合物)曝露に関する一連の研究成果を発表しました。第一の研究では、日本で市販されているペットフード100製品を対象にPFAS汚染の実態を調べ、第二の研究では、実際にペットフードを食べていた犬・猫の血清中PFASを解析しました。これらの成果により、ペットフードが、特に猫における長鎖PFCA曝露の一因となる可能性が示されました。

【背景】
PFASは、水や油をはじく性質などから幅広く利用されてきた化学物質群です。一方で、環境中で分解されにくく、食品、水、野生生物、ヒトからも検出されることから、環境と健康への影響が世界的に問題となっています。家庭で暮らす犬や猫は、ヒトと同じ室内環境や生活空間を共有し、さらに市販フードを継続的に摂取しています。そのため、伴侶動物は家庭内の化学物質曝露を理解するうえで重要な存在です。

【研究の手法】
最初の研究では、日本で市販されている犬用・猫用ペットフード100製品を対象に、34種類のPFASを分析しました。製品の種類、原料、原産国などに着目し、どのような製品でPFASが高くなるのかを調べました。

続く研究では、北海道、大阪、愛媛で収集された犬23頭・猫30頭の血清を対象に、分岐異性体や新興PFASを含む38種類のPFASを分析しました。さらに愛媛コホートでは、同じ個体に実際に給与されていた乾燥ペットフードを収集し、血清中PFAS濃度とフード中PFAS濃度をペアで比較しました。

【研究の結果】
市販ペットフードの解析では、多くの製品からPFASが検出されました。特に魚由来原料を含む製品では、PFOSやPFUnDA、PFTrDAなどの長鎖PFASが高い傾向を示しました。これらの物質は海洋食物網で蓄積しやすいため、魚を含む原料がペットフード中PFASの重要な要因である可能性が示されました。また、新興PFASの一つである9Cl-PF3ONSも一部製品から検出されました。

犬猫血清の解析では、犬と猫でPFASの組成が異なることが分かりました。猫ではPFNA、PFDA、PFUnDA、PFDoDA、PFTrDAなどの長鎖PFCAが高く、犬ではPFOSやPFHxSの寄与が相対的に大きい傾向がみられました。愛媛コホートのペア解析では、猫においてPFOS、PFUnDA、PFTrDA、総PFASのフード中濃度と血清中濃度の関連が明瞭であり、実際に給与されていたペットフードが猫の長鎖PFCA曝露に寄与している可能性が示されました。

一方で、本研究は食餌だけがPFAS曝露源であることを示すものではありません。室内ダスト、飲料水、グルーミング、屋外活動、家庭用品、さらに犬猫の体内動態の違いも、血清中PFAS濃度に影響する可能性があります。特に犬では、フードとの関連が猫ほど明瞭ではなく、より多様な曝露経路が関与している可能性が考えられます。

【研究の意義】
本研究の特徴は、市販ペットフードの汚染実態を示しただけでなく、実際にそのフードを食べていた犬・猫の血清中PFASと結びつけた点にあります。これにより、家庭で暮らす伴侶動物における食餌由来PFAS曝露の可能性を、より現実に近い条件で評価することができました。

伴侶動物はヒトと生活環境を共有するため、動物の健康だけでなく、ヒトを含む家庭環境中の化学物質曝露を考えるうえでも重要です。今回の成果は、環境汚染、動物の健康、ヒトの生活環境を一体として捉えるOne Healthの視点から、ペットフードを介したPFAS曝露を理解するための基盤となるものです。

【今後の展望】
今後は、ペットフードに加えて、室内ダスト、飲料水、グルーミング行動、食品原料の由来などを組み合わせた解析が必要です。また、犬と猫ではPFASの体内動態や感受性が異なる可能性があるため、伴侶動物種ごとのリスク評価指標の整備も重要です。

参考 URL1: https://doi.org/10.1016/j.envpol.2026.127779

論文情報

【主論文】
タイトル:Widespread PFAS contamination in pet food: Dietary sources and health risks to companion animals
著者:Kei Nomiyama, Aika Sato, Rumi Tanoue, Kohei Saeki, Yoshinori Ikenaka, Hazuki Mizukawa
掲載誌:Environmental Pollution, 395, 127779,
DOI:10.1016/j.envpol.2026.127779, 2026.

【関連する続報】
タイトル:Species-specific PFAS profiles in companion dogs and cats: paired serum–food evidence for dietary long-chain PFCA exposure in Japanese cats,
著者:Kei Nomiyama, Aika Sato, Fuka Sato, Rumi Tanoue, Kohei Saeki, Hazuki Mizukawa, Nozomu Yokoyama, Mitsuyoshi Takiguchi, Yoshinori Ikenaka,
掲載誌:Journal of Hazardous Materials Advances, 23, 101468,
DOI:10.1016/j.hazadv.2026.101468, 2026.
https://doi.org/10.1016/j.hazadv.2026.101468

助成金等

  • 文部科学省 共同利用・共同研究拠点「化学汚染・沿岸環境研究拠点(LaMer)」
  • 科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業 JPMJFR221D
  • 日本学術振興会(JSPS)科研費 JP24H00779, JP22K18425, JP23H00512, JP25K03283

図表等

  • 市販ペットフードにおけるPFAS汚染の特徴

    市販ペットフードにおけるPFAS汚染の特徴

    市販ペットフード中PFAS汚染に関する研究と、その続報である犬猫血清・給与フードのペア解析をまとめた図です。魚由来原料を含むペットフードでPFASが高い傾向が見られ、猫では長鎖PFCA曝露にペットフードが寄与する可能性が示された。

    credit : 野見山 桂(愛媛大学)
    Usage Restriction : 使用許可を得てください

  • イヌ・ネコの血清中PFASとペットフードの関係

    イヌ・ネコの血清中PFASとペットフードの関係

    ペットのイヌ・ネコを対象に、血清と実際に給与されていた乾燥ペットフードをペアで解析した。猫では長鎖PFCAの寄与が犬より大きく、PFOS、PFUnDA、PFTrDA、総PFASで血清中濃度とペットフード中濃度の強い関連が認められた。ペットフードが特に猫の長鎖PFCA曝露に寄与する可能性が示された。

    credit : 野見山 桂(愛媛大学)
    Usage Restriction : 使用許可を得てください

問い合わせ先

氏名 : 野見山 桂
電話 : 089-927-8196
E-mail : nomiyama.kei.mb@ehime-u.ac.jp
所属 : 愛媛大学 先端研究院 沿岸環境科学研究センター(CMES) 准教授