瀬戸内海のPFOA:変動特性、輸送、行方

河川起源のペルフルオロオクタン酸(PFOA)に関する瀬戸内海における変動特性、輸送機構および行方

河川起源のPFOAは、瀬戸内海の西部よりも東部で高い濃度を示している。その主な原因は淀川および大和川からの流入である。これらの汚染物質は大阪湾に流入した後、その大部分が紀伊水道へ輸送され、同水道の上層約20メートルを経由して太平洋へと流出される。日本南岸から太平洋への年間輸出量は328.0~348.9kgと推定され、その大部分は瀬戸内海に起源を有している。

ペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、有機フッ素化合物群に属するペルフルオロおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)の一種である。PFOAは、その毒性および生物蓄積性により、ヒトの健康および環境の安全に対して潜在的な悪影響を及ぼすことが指摘されている。さらに、その高い化学的安定性、広範な使用、および長距離輸送特性により、PFOAは地球規模の環境中に広く遍在している。

瀬戸内海周辺の河川においては、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)の濃度が高水準で検出されているため、瀬戸内海は太平洋に対する重要なPFOA供給源の一つであると考えられる。本研究では、当該海域における河川起源のPFOAの変動特性、輸送過程および行方を解明することを目的として、海水流動モデル、低次生態系モデル、PFOA結合モデルを構築し、溶存態および生物起源粒子態のPFOAの挙動に関数するシミュレーションを行った。

数値モデルの結果によると、溶存態と粒子態を合わせたPFOAの平均濃度は、瀬戸内海東部において468.5ng m-3と算出され、西部(11.5ng m-3)と比較して顕著に高い値を示した。また、粒子態と溶存態の配分比は、沖合域に比べ沿岸域で高い傾向が認められた。淀川および大和川からの流入は、瀬戸内海東部におけるPFOA濃度分布を支配する主要な原因である。

大阪湾に流入したPFOAの約25%が播磨灘へ、約63%が紀伊水道へ輸送されている。後者は、紀伊水道の上層約20mを通じて太平洋へと運ばれ、瀬戸内海におけるPFOAの主要な行方となっている。

さらに、大阪湾および周防灘に流入する河川から太平洋へ流出するPFOAの割合(それぞれ88%および57%)を上限および下限として、日本南岸に位置する河川から太平洋へ流入するPFOAの総量を推定した。その結果、年間輸送量は328.0~348.9kgと見積もられ、その大部分は瀬戸内海に起源を有することが示唆された。

参考 URL1: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S030438942601321X

論文情報

Variability, transport, and fate of riverine perfluorooctanoic acid (PFOA) in a heavily PFOA-impacted coastal sea
Yaxian Li, Xinyu Guo, Qian Leng, Yu Bai, Xueting Zhao
Journal of Hazardous Materials, 2026, 512, 142343
https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2026.142343

助成金等

  • Moonshot Research and Development Program (Grant Number JPNP18016)
  • New Energy and Industrial Technology Development Organization (NEDO)
  • Grant-in-Aid for Scientific Research (MEXT KAKENHI, grant numbers: 25K03283)

図表等

  • 瀬戸内海におけるPFOA濃度の空間分布と季節変化

    瀬戸内海におけるPFOA濃度の空間分布と季節変化

    1月、4月、7月、10月における(a-d)溶存態PFOA濃度と(e-h)粒子態PFOA濃度の空間分布。(a)の黒色点線は、瀬戸内海の西部と東部の境界を示している。

    credit : 郭 新宇 (愛媛大学)
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  • 瀬戸内海におけるPFOAの物質フロー

    瀬戸内海におけるPFOAの物質フロー

    瀬戸内海の西部と東部におけるPFOAの年間収支を示す。矢印に付された値(単位:kg y-1)は、1年間における物理過程および生物地球化学過程を通じた総輸送量を表している。括弧内の値(単位:kg)は、各海域におけるPFOAの存在量を表す。また、瀬戸内海西部から東部への水平フラックスは1 kg y-1である。

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  • 瀬戸内海における総PFOAの年間輸送量

    瀬戸内海における総PFOAの年間輸送量

    瀬戸内海における総PFOAの年間輸送量を示す。背景の陰影は、PFOAの堆積物へのフラックスを表している。W1–W3およびE1–E4と記された実線は断面の位置を表す。赤色の矢印はPFOAの輸送方向を示し、矢印に付された数値は輸送量を表す。緑色の矢印は、これらの断面で区分された各サブリージョンへの河川起源PFOAの流入量を示している。図中の数値の単位はkg y-1である。

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