地球下部マントル鉱物の第一原理シミュレーション
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター数値計算部門の土屋卓久教授、土屋旬准教授、出倉春彦講師、Sebastian Ritterbex研究員は、地球深部マントルの主要構成鉱物と考えられている(Mg,Fe)SiO3ブリッジマナイト(Brg)、その高圧相のポスト・ペロブスカイト(PPv)、CaSiO3ペロブスカイト、(Mg,Fe)Oフェロペリクレース、その他含水鉱物の高精度計算機シミュレーション及びそのための手法開発において数々の成果をあげてきました。これにより地球下部マントルの物質構成やマントル深部で安定となる新たな高圧鉱物相に関して新たな発見や知見が得られました。
第一原理量子力学計算法に基づく鉱物物性理論の最近の進展は、コンピュータの急速な性能向上とも相まって、目覚ましいものがあります。現在では、複雑な構造を有する鉱物の安定性、弾性特性、さらには輸送特性などの性質を実験と同程度かそれ以上の精度で予測することが可能です。これにより地球深部の物質構成を理論的にモデル化することなどが可能となるため、超高温超高圧下におけるシミュレーションは特に興味が持たれています。本論文では、ケイ酸塩((Mg,Fe)SiO3ブリッジマナイト(Brg)、その高圧相のポスト・ペロブスカイト(PPv)、CaSiO3ペロブスカイト)、酸化物((Mg,Fe)Oフェロペリクレース)、含水鉱物(AlOOH, MgSiO4H2, FeOOH)を含む下部マントル鉱物の高圧下における相関係、弾性特性、熱伝導特性、塑性変形特性に関する最新の計算結果ついて報告しています。我々の解析から、地球の密度、P波速度、S波速度がパイロライト組成によりとてもよく再現可能であることや、マントル最深部まで安定な高圧含水鉱物が存在すること、ポスト・ペロブスカイト相転移境界は鉱物相境界であるのみならず熱伝導特性に関しても境界となっていることなどの新たな知見が得られました。
参考 URL1: https://www.annualreviews.org/doi/10.1146/annurev-earth-071719-055139
論文情報
Ab initio study on the lower mantle minerals. Taku Tsuchiya, Jun Tsuchiya, Haruhiko Dekura, and Sebastian Ritterbex, Annual Review of Earth and Planetary Sciences, 48, published online on December 3, 2019. Doi:10.1146/annurev-earth-071719-055139
助成金等
- 文部科学省 科学研究費助成事業 JP15H05826
- 文部科学省 科学研究費助成事業 JP15H05834
図表等
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地球深部マントルの主要構成鉱物と考えられている(Mg,Fe)SiO3ブリッジマナイト(Brg)、その高圧相のポスト・ペロブスカイト(PPv)、CaSiO3ペロブスカイト、(Mg,Fe)Oフェロペリクレース
credit : 愛媛大学
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問い合わせ先
氏名 : 土屋 卓久
電話 : 089-927-8198
E-mail : tsuchiya.taku.mg@ehime-u.ac.jp
所属 : 地球深部ダイナミクス研究センター