2つの芳香環形成が複数の正電荷を安定にする

酸化還元特性を示す含窒素縮合多環式芳香族化合物

ヘテロ原子を含んだ縮合多環式芳香族化合物は、有用な分子性材料の一つである。本研究では、ピロールとアズレンの両方を環状に縮環させた新しいアザコロネンの合成が達成された。既報のアザコロネンと同様、電気化学もしくは酸化剤を用いた化学酸化によって多段階の酸化種が安定に存在することが示された。特にジカチオンでは、二つの芳香環形成が正電荷の安定化に寄与していることが明らかにされた。

アズレンとピロールを用いて酸化還元に安定な縮合多環式芳香族化合物(PAHs)が開発された。新しく合成された含窒素PAHは、ジカチオンにおいて二つの異なる芳香環を形成し、グローバル芳香族性の獲得によって正電荷を安定化させていることが明らかにされた。本研究成果は、201935日にOrganic Lettersに発表された。

構造が明確な新しいPAHsの開発は、次世代材料創成の観点から非常に興味が持たれている。なかでも酸化還元が可能なPAHsは、分子エレクトロニクス分野への応用が期待されることから特に重要である。このような背景の下、研究グループでは、6個のピロールをコロネンの外周部に縮環させたアザコロネン、すなわちヘキサピロロヘキサアザコロネン(HPHAC)の開発に成功している。環状に縮環させたピロールの効果で、酸化体を可逆的に生成する事が可能で、特にジカチオン種において22個のπ電子が共役することによるグローバル芳香族性の発現が明らかにされている。本研究では、一つのピロールをアズレンに置換したアザコロネンが新しく合成された。アズレン中の電子不足な7員環部位で、芳香族性を示すカチオン性トロピニウムカチオンを形成することで、正電荷の安定化に寄与することが期待された。実際、ジカチオンの単結晶構造解析やDFT計算の結果から、22π電子系の環状共役と6π電子系のトロピリウムカチオンの二つの芳香環の形成が示唆された。電荷の共鳴様式を制御することは、新しい分子性機能材料を創成する上で重要な設計指針となる。本研究で得られた成果は、酸化還元に耐性のある新しいPAHの創成に繋がると期待される。

参考 URL:https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.orglett.9b00515

論文情報

【掲載誌】 Organic Letters
【題名】 Synthesis and Redox Properties of Pyrrole- and Azulene-Fused Azacoronene(ピロール、アズレン縮環アザコロネンの合成と酸化還元特性)
【著者】 Yoshiki Sasaki, Masayoshi Takase, Tetsuo Okujima, Shigeki Mori, Hidemitsu Uno
DOI10.1021/acs.orglett.9b00515

助成金等

  • JSPS科研費 JP16K05698

図表等

  • 22π+6π芳香環を有するピロールとアズレンが縮環したアザコロネンジカチオン

    22π+6π芳香環を有するピロールとアズレンが縮環したアザコロネンジカチオン

    credit : FIgure Adapted with Permission from Organic Letters 2019, 21, 1900-1903. © 2019 American Chemical Society
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