微量の酸によって簡単に低分子に分解するポリマーの開発に成功!

愛媛大学の下元浩晃講師、井原栄治教授らの研究グループは、ロジウム錯体を触媒とするビスジアゾカルボニル化合物、ビス(1,3-ジケトン)、テトラヒドロフランの3成分縮合重合による、新しいタイプの分解性ポリマーの合成に成功しました。ここで合成されたポリ(β-ケトエノールエーテル)と呼ばれるポリマーは、極めて微量の酸によって効率良く2種の低分子化合物に分解します。この特徴的な酸分解性のため、このポリマーは環境に優しい合成高分子材料としての応用が期待できます。

愛媛大学大学院理工学研究科・物質生命工学専攻の下元浩晃講師、井原栄治教授らの研究グループでは、ビスジアゾカルボニル化合物(1分子内に2つのジアゾカルボニル基と呼ばれる官能基を有する化合物)をモノマー(原料)として用いる新しい重合反応の開発研究を行っており、これまでに様々な新しい構造を有するポリマーの合成に成功してきました。今回この研究グループは、ビスジアゾカルボニル化合物に加えてビス(1,3-ジケトン)とテトラヒドロフランをモノマーとする3成分縮合重合によって、ポリマー主鎖中にβ-ケトエノールエーテルという酸の作用によって容易に分解する骨格を有する新しいポリマー[ポリ(β-ケトエノールエーテル)]が得られることを見出しました。

ロジウム(Rh)錯体を触媒として用いるこの重合反応により、分子量10000を超えるポリマーを得ることが可能です。そして、得られたポリマーは微量の酸の作用によって効率良く2種の低分子化合物に分解することが明らかになりました。2種の分解生成物のうち、一つはモノマーのビス(1,3-ジケトン)であり、これは回収後に再度モノマーとして再利用することが可能です。もう一つの分解生成物はビスジアゾカルボニル化合物とテトラヒドロフランが結合した化合物です。

この酸による分解の反応性は極めて高く、例えばこのポリマーはクロロホルム溶液中において、クロロホルム中に不純物として極微量含まれている酸成分によっても数日間でほぼ完全に分解します。しかし、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような酸成分が含まれてない溶媒に溶解した状態では、まったく分解することはありません。

このポリマーの酸に対する極めて高い分解性を利用した、有用な材料としての応用が期待できます。例えば、このポリマーで合成したカプセル中に薬物を内包すれば、服用後に弱酸性条件下でカプセルが分解し薬物が放出されるでしょう。また、材料としての使用後に弱酸性条件下で簡単に分解するプラスチックとしての利用も考えられ、難分解性のプラスチックが引き起こしている環境問題の解決に貢献できる可能性もあります。

論文情報

【掲載誌】Macromolecules, 52, 5761-5768 (2019).
【題名】Poly(β-keto enol ether) Prepared by Three-Component Polycondensation of Bis(diazoketone), Bis(1,3-diketone), and Tetrahydrofuran: Mild Acid-Degradable Polymers To Afford Well-Defined Low Molecular Weight Components [ビスジアゾカルボニル化合物、ビス(1,3-ジケトン)、テトラヒドロフランの3成分縮合重合によるポリ(β-ケトエノールエーテル)の合成:温和な酸性条件下で構造の明確な低分子化合物に分解するポリマー]
【著者】Hiroaki Shimomoto, Takeshi Mori, Tomomichi Itoh, and Eiji Ihara
DOI10.1021/acs.macromol.9b00653

助成金等

  • JSPS科研費 15H00755, 26104525, 16H00841, 15K05521, 19K05586, 16K17916, and 18H02021.

図表等

  • 新しい酸分解性ポリマーの合成

    新しい酸分解性ポリマーの合成

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問い合わせ先

氏名 : 井原 栄治
電話 : 089-927-8547
E-mail : ihara@ehime-u.ac.jp
所属 : 大学院理工学研究科