光を使った21世紀の“錬金術”

紫外線を当てると金属化する物質の発見

紫外線を当てると非常に高い電気伝導性を示す分子結晶が見つかりました。この物質は非金属(電気を流さない物質群)と金属(電気を流す物質群)との中間に属し、光を消すと元の状態に戻ります。この現象は何回でも繰り返せますが、紫外線照射以外の方法では起こせません。紫外線照射下での磁性も測定した結果、この物質は紫外線照射中のみ金属の特徴(高い電気伝導性や金属常磁性)を示すことが分かりました。この発見は、物質には、他の方法では実現できないが、光照射を使えば実現できる機能や物性が隠れている可能性を意味しています。

光伝導と言う現象が1873年に発見されました。ある種の絶縁体に適切な波長の光を当てると、半導体(金属ではないが、ある程度電気を流す物質群)として振る舞うという現象です。これが今ではあらゆる光学素子、例えばセンサーやCCDカメラ、リモコン、太陽電池と幅広く実用化されています。しかしこの光伝導にも1つだけ弱点があります。それは金属のような高い電気伝導は実現できないということです。金属的な電気伝導性は、半導体よりも消費電力が少ないという点で、各種電子デバイスに実装されれば有益です。ここで紹介する研究の中で、我々は金属に匹敵する高い電気伝導性を紫外線照射下で示す分子結晶を見出しました。この物質がユニークな点は、紫外線が無いところでは金属と非金属との間のような、両者の特徴を併せ持つことです。しかし、これを紫外線照射以外の方法、例えば圧力を掛けたり温度を上げたりすることでは、金属として振る舞わせることは出来ませんでした。圧力印加や温度変化で金属化する絶縁体は数多く知られていますが、この物質はそうではありませんでした。本研究成果の意義は、光伝導のレパートリーの中に金属と言う選択肢が加わっただけではありません。もっと一般的に、世の中の物質には光照射でしか実現できない未知の状態や性質が、まだ他にも眠っている可能性を意味します。これまで化学者は何世紀にも亘って、新しい機能を見つけるために新しい化合物をつくり、その性質を(光を当てない状態で)調べてきました。しかしこれからは、光を当てた状態で新機能を探すことも重要であるということを示しています。

論文情報

掲載誌:Journal of Materials Chemistry C

題名:A Possibly Highly Conducting State in an Optically Excited Molecular Crystal(分子結晶で見つかった新しい機構の光伝導)

著者:Toshio Naito, Tomoaki Karasudani, Ryoma Yamamoto, Ming Yang Zhang, and Takashi Yamamoto

DOI:10.1039/c9tc00491b

助成金等

  • 愛媛大学GP
  • 公益財団法人 東京化成化学振興財団
  • 公益財団法人 東京応化科学技術振興財団
  • 公益財団法人 加藤科学振興会
  • 日本学術振興会・科研費(18K19061)

図表等

  • 分子結晶で見つかった新しいタイプの光伝導

    分子結晶で見つかった新しいタイプの光伝導

    紫外線を一瞬当てるだけで、絶縁体中を電流が湧き出るように流れ出すイメージ。
    この現象は図中に示されたこの物質を構成する2種類の分子が織りなす不思議な物理的性質に起因しています。

    credit : 愛媛大学
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